bitfanについて

2月3日に発表された、株式会社SKIYAKIによるファンサービスに関する新システム、bitfanについての考えを書こうと思います。

 詳しくはこちら(https://bitfan.skiyaki.tokyo)を見ていただければわかりますが、簡単に言うと、グッズの購入、SNSでの拡散、その他さまざまな要因によって配布されるポイントに応じて、ファンクラブ内での順位付けがなされ、その結果が上位であれば、アーティストと握手や写真撮影ができる、というサービスです。第一弾アーティストとして岡崎体育さんが導入することが発表されましたが、「お金をとってランク付けをする」というイメージから、評判は二分しているようです。

 このサービスの一番の問題点は、順位付けが相対的であることだと思います。ファンクラブであれば3000円一律だとか、価値が絶対的なものですが、このサービスは他のメンバーの動向によって価値が変動する相対的なものとなっており、これまでにはなかった文化が持ち込まれています。

 電車で例えてみましょう。

 切符を買う時、特別な場合を除いて、誰でも目的地までの金額は同じです。A駅までなら500円。特急指定席に乗りたい。そうすると、指定料金を取られますね。これも一律です。 A駅までなら1000円。 これまでのファンクラブはこういう文化でした。CDを買うなら誰でも500円。ファンクラブに入るなら誰でも1000円といった、一律の絶対的なものでした。

 しかし、今回グリーン車を用意しました。グリーン車料金はA駅まで1万円です。このグリーン車は、席数が少なくてすぐに満席になります。その時に、「私は10万出すから他の客を降ろして乗せてくれ」とは、これまでの絶対的な価値の文化では言えません。1万円の座席は誰でも1万円でした。10万円払ったって、他の乗客の1万円の価値は絶対で、奪えないはずです。でも今回のbitfanはこれができてしまう。1万より、10万が偉い。これが相対的な文化です。オークションでは当たり前ですが、これまでのファンクラブなどの文化とはまったく異なった形式だからこその、今回のような、発表後すぐに巻き起こった拒絶反応とも言えるでしょう。

 また、このシステムがファンを疲弊させてしまい、長期的にみるとファンが離れてしまったとしたら、短期戦略では成功と言えても、長期戦略では失敗と言わざるをえません。また、マネジメント側が戦略としてこのシステムを導入していたのではなく、ただ単にファンへの返報として導入したのであれば、恩を仇で返すようなシステムとして受け取られる心配もあります。

 bitfanが将来的に他のアーティストへも進出することを考えた時、現在のシステムでは大きな危険性を感じます。熱狂的なファンの報われない感情が発展した末の凶行を、昨今よく耳にするようになりました。ファンクラブは、いわばライト層とコア層での棲み分けですが、そのコア層の中で、前述のような相対的細分化を図ってしまうと、ファンの疲弊だけでなく、「一番でない」といった感情が芽生えてしまい、暴走を生み出してしまうことに繋がりかねません。もし、カリスマ性のあるアーティストや、アイドルにこのシステムが導入された時、このリスクは無視できないものであると思います。そのような凶悪な犯罪を助長してしまうシステムになることは、誰も望んでいないことです。

 この問題への解決策は、価値の絶対化です。例えば、5年間継続すればランクが上がり、3万円以上購入すればランクが上がり…というように、絶対的なわかりやすいモノサシがあれば、ここまでの混乱は起きないはずです。システムの一番の目玉を潰してしまう、といえばそうなりますが、この問題をどうにかしないことには、いばらの道であることを覚悟での導入が余儀なくされるでしょう。

 アーティストや開発者は、純粋にファンへの返報としてシステムを導入したのかもしれません。しかし、昨今のテクノロジーの発達により、ファンとアーティストの関わりは大きく変化し、残念ながら純粋性だけで解決可能な域を超えた、心理も関わるめんどくさい問題になってきています。一部を守れば大勢がシラけ、大勢を守れば一部へ返せない。

 ただ、そのジレンマを打ち破れるシステムとして、ファンの力を借りた売り出しや、才能あふれる人たちがお金を集めるシステムとして、ファンがもっとアーティストを好きになれるシステムとして、bitfanには大きな可能性が秘められているとも思います。これまで長々と文章を書きましたが、実際やってみるまでどうなのかまったくわかりません。だから、ダメだったら改善して、よかったら維持でいいと思います。システムを導入することでアーティストがダメだとか、そんなのではなく、ファンとアーティストがそれぞれに納得する道を探るのが、このシステムの未来のためにも大切です。誰かが先駆者とならなければ、一向に時代は変わりません。その中で第一歩を踏み出した岡崎体育さんは、本当に勇気ある決断を下されたと思います。

 最後に、私はこのシステムがあんまり好きじゃないです。だってファンはファンだもの。ファンに1位も2位もないし、それぞれの、その人なりの楽しみ方や応援の仕方があるはずです。それをアーティスト側が、強制ではないにしても、方向付けることは、否定されてしまったと同じように思えてしまいます。お金が必要で、そのための宣伝が必要で、といった事情もよくわかるのですが、あんまりいい気持ちはしないなぁ、というのが、これまでの理論とか前提とかをぜんぶ無視した、最初の個人の感想です。きっと、こう思われている方は私以外にもたくさんおられると思います。ファンの気持ちの問題を乗り越えられるかどうかも、大きなポイントではないでしょうか。

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