猫カフェDiary

 「明日は一日空いているしひたすら寝よう」そう思って目覚ましもかけずに寝ていたのに、勢いよくドアを開けながら妹たちが起こしに来た。この場合、いつもなら軽くあしらうだけだが、今日は違った。妹たちに「何時に猫カフェいくん?」と言われ、寝ぼけながらスマホのメモを見ると、「5月13日(日)、猫カフェ」しっかりと記されていた。そういえば2週間くらいまえに口約束したような気が…。気分は乗らなかったけど、妹たちは行く気満々だし何より約束したから仕方ないと腹をくくって、雨の中車に乗り込んだ。

 それは海沿いの公園に近い、いたって普通の民家だった。あかい暖簾がなかったら気づかずに通り過ぎていただろう。物音が全くしないので、もう一度営業日か確認してからゆっくりと中に入った。玄関から先は猫が逃げないよう2重扉になっている。居間の手前で声をかけたところ、しばらくして一人の女性がやってきた。見た感じは店員よりも飼い主というほうが適切かもしれない。少し緊張気味だったのを察してか、「どこから来たの?」「この子は妹さん?」「どうやってここを知ったの?」などと気軽に話しかけてくれた。優しい人でよかった。

 1時間分の支払いを先に済ませ、中に入れてもらった。2階建ての内装は木がベースで、いい意味で全体的にこぢんまりとしていた。お釣りを渡してすぐ仕事に戻ってしまったので、女性からの説明は特にない。とりあえずコーヒーを淹れて…と思いコップにお湯を注いでいると、すでに妹たちの姿はなかった。

 コーヒーを片手に2階へあがって見渡すと、マッサージチェアの後ろでずっと警戒している猫と、3匹の猫たちがごろごろしていた。とりあえず一番近くにいた猫を撫でていると、いきなりの甘噛み。といってもかなり痛い。しかも運が悪いことに、2階についてきていた妹たちに見られる始末。妹たちがこれを見て怖がらないかと思い振り返ると、案の定顔が引きつっていた。

 店内をうろうろしていると、猫たちのプロフィールが書いてある紙を見つけた。さっき噛んできた猫を見てみると、「甘えん坊だけど、甘噛みに注意、けっこう痛い」甘えてきただけで嫌われてなかったと一安心。ところで、およそどの猫にも共通している記述があった。「虐待」の二文字。一見のんびり過ごしているように見えるが、みんな虐待から保護された猫たちなのかと思うと、急に胸が苦しくなった。

 触れ合いに始めこそ戸惑ったが、猫が反応してくれるのを見るにつれて妹たちの笑顔が増えていった。おもちゃで遊んでいると猫が反応してきたり、撫でていると身を寄せてきたり。普段生き物と接する機会がないから余計にうれしかったのかもしれない。ずっと警戒していた猫も最初は威嚇して逃げ回っていたけど、撫でても怒らないくらいまで心を開いてくれた。こうして、猫たちとのひと時はあっという間に過ぎていった。

 女性にお礼を言い、玄関で靴を履いていると後ろから声をかけられた。「これ、大量にもらいすぎたからちょっとあげる」そう言ってキャットフードを手渡された。「猫は飼ってませんよ」と言うと、「バイトの先輩にあげて」とのこと。そういう話はしたけど、まさか覚えてくれているとは。重ねてお礼を言い、また次の約束をした。「また来ます」と。今度はちゃんと覚えておこう。

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