ツバメの詩

1.夫婦の仕事

昨日の朝、実家の周りでやたらとツバメの声が聞こえたり、ツバメが低空飛行で玄関に突っ込んできたりしていたんですが、夕方に1組のつがいが玄関の天井で巣作り候補地の内見をしていました。

個人的な感覚ですが、鈴鹿は3月中旬頃になるとツバメが渡ってきます。その後、市内全域で飛んでいる姿を見かけますが、実家に巣を作りに来たのは今回が初めてです。

玄関の天井を改めて確認すると、凹凸の壁があるうえに外側から見えにくく、巣作りには都合の良い構造になっていました。むしろ今までなぜ来なかったのか不思議なくらいです。

2.ツバメの言い伝え

昔から、ツバメが巣をつくる家には幸せが訪れるといいます。それは、ツバメが家の田んぼや畑の害虫を食べることによって豊作をもたらすというところからきているみたいです。

また、ツバメは基本的に人家に営巣します。これは、タカやヘビといった天敵から身を、ヒナを守るためだそうです。たしかに、タカやヘビは人が出入りするようなところにはあまり姿をあらわしません。このことから、逆に「ツバメが巣をつくるところ=人が出入りするところ」となり、商売繁盛の印ともなったようです。(いい参考資料がなかったのであまり確かだとは言えないんですが…)

個人的には、最近はあまりいいとは言えない流れだったんですが、ツバメが来た昨日はそれを断ち切れそうな出来事がありました。もしかしたら、これは良い流れが訪れるきっかけになるかもしれませんね(笑)。

3.閉じる世界。忘れられる意味。

それはともかく、ツバメは人間の生活に深く関わる鳥だったといえます。それは、先述の「ツバメが田畑の害虫を食べてくれることで豊かな収穫がもたらされ、ツバメも人家に巣をつくることでヒナを襲う天敵から守られる」という共生関係のようなシステム的な部分だけではなく、春という季節を象徴する風物詩や幸運の象徴といった精神的な部分にまで及びます。

しかし、現代では自然と社会のかかわりが感じにくくなるとともに、季節感という四季を持つ日本ならではの感覚も薄れつつあります。農業人口や自然のなかで遊ぶ機会は減り、多くの人々の社会は人間と人間との関係で閉じるようになりました(実際はそう見えているだけなのだが)。また、都市化やいつでもなんでも手に入る消費などにより、気象条件やそれに関するモノ以外で季節を感じることは少なくなっています。

そのなかで、ツバメがいることの意味も忘れられつつあるような気がします。私の家族が「邪魔だ」といって追い払おうとしたことは、その典型例と言えるかもしれません。実際に、里山や農地の減少によってツバメの個体数が減っており(※1)、人が巣を落とす事例も数多く報告されています(※2)。もちろん、これはツバメだけの話ではなく、「自然」という存在そのものにも言えます。ただ、この「意味が忘れ去られる」という現象が、ツバメのように知らない人がほとんどいないであろう身近な生物にさえ起きているというのは怖い話です。

4.ツバメが伝える幸福論

たしかに、巣ができるとフンや虫が湧くといったネガティブな面もあります。特に、出入り口近くや洗濯物を干す場所の近くに巣をつくられると、衣類や頭にフンが落ちてくる可能性が出てきます。そういう場合は、巣を作らせない措置をとるのもやむを得ません。

しかし、きちんとした対策を行い、ツバメの子育てを見守っている人がたくさんいることも事実です。例えば、阪急電鉄 千里線の豊津駅では、今年も元気にヒナが鳴いていました。その駅では、フンが利用客に落ちないように巣の下に紙製の受け皿を設置したり、階段に「ツバメの巣↑」と案内を書いたりしています。

こうした「ネガティブな面は人間の都合としてしっかり対策し、人間とは異なる1つの家族とそれぞれの生命の営みを見守ることができる」という寛容さや、そういった出来事から季節の風流を感じ取る心は、人生や日常をより豊かにするものです。さらに、自分とは違う主体を認め受け入れられること、そして目の前の日常に自ら彩りを見出せることは、心に余裕があることの表れでもあります。同時に、それらは現代の生活において、ふとした時に見失ってしまいます。

もしかすると、ツバメが運ぶ幸福というのは、そういった内面的・人間的な部分から生まれるものなのかもしれません。つまり、ツバメの営みを受け入られる寛容さや、むしろそれを楽しめる心を持った人間にこそ幸福が訪れるということです。もし、これから巣ができ、ヒナが生まれ、育った若いツバメが秋に南へと飛び立つことがあれば、その幸福と自分の心を見直すいい機会になればいいなぁと思います。

2019年05月03日 大脇崚冴

※1 日本野鳥の会「消えゆくツバメを守ろうキャンペーン ツバメの現状」(2019年05月

03日 最終確認)

https://www.wbsj.org/nature/research/tsubame/decrease.html

※2 日本野鳥の会「消えゆくツバメを守ろうキャンペーン プレスリリース 2016.05.09」

(2019年05月03日 最終確認)

https://www.wbsj.org/activity/press-releases/press-2016-05-09/

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