ナーロッパに行くんだよ

 前回のあらすじ!ナーロッパってなんやねん!では解説していきます。

 ではまず、ナーロッパ世界の基準を考えてみましょう。生活基準を顧みるとナーロッパは“近世”に当たります。これは多くの識者が提唱している論ですが、一体どういうことなのでしょうか。

 “中世”という時代の始まりは5世紀に西ローマ帝国が滅ぼされたことで幕を開けます。そこから現在の欧州地図の原型が徐々に誕生していった時代、それが中世です。ゴート王国やイングランド、ドイツにイタリア、ポーランド……様々な国家が登場しては消えていくそのような時代です。

 農業をはじめとした産業も中世では一気に質が下がります(といってもローマ帝国の技術力が桁違いなのもありますが)。その古代式科学統治の時代に取って代わったのが宗教、具体名を出すならキリスト教です。中世においてはこの教会権力が大きな権力を握っていました。

 その他詳しい説明は省きますが、中世ヨーロッパという時代はかなり暗黒な時代です。よく「う●こを窓から捨てる」という表現がなされますが、衛生意識というのもそれぐらいでしたし、農業生産力が落ちたために食糧供給も厳しくなったある種の冬の時代です。そこから領主の下で励み、何百年の時を超えてルネサンスを迎えるのです。そこまで約千年、何とも言えない時間がかかっていますね。中世ヨーロッパとは、失われた歴史の再発見の時代なのです。

 一方のナーロッパですが、これは一言で言い表せます。近世です。描かれているほとんどのものは中世に存在しません。騎士はいましたが、あんな高潔な物でもありません。魔女狩りもほとんどないですし、衛生管理が低いために流行り病が蔓延しました。しかし、近世に入るとそれらは徐々に顔を出してきます。つまりはナーロッパとは近世ヨーロッパ的な世界といえるでしょう。

 ただ、そう簡単に物は進みません。何故なら実在の社会ではどうにも説明できない物もあるからです(そもそもあんな世界は作者だってよく分かってないだろとは言っちゃいけません)。

 これも別の側面から見ることで解決します。それはゲームの世界観です。TRPGやウィザードリィからはじまるRPGの冒険者組合がこれらの世界観に補強をしています。否、RPG的世界観をベースに自分の盛り込みたい要素を詰めた世界こそナーロッパなのです。現在のなろう作家であればドラクエが基盤でしょうか。そのドラクエ的世界観を能力マシマシ主人公が適当にやって何故か女にモテる物語がなろう系とも言えるでしょう。

 続いては魔法についてです。不肖、僕も魔法を用いた物語を執筆している身分として色々考える部分はあります。僕は現代社会に魔法を加えたローファンタジー(この時のローファンタジーは現代社会に魔法を混ぜ込んだ物語とします)を執筆するのが好きなのですが、今回は完全異世界であるナーロッパの魔法について考えてみましょう。

 古典派氏が述べていた論点である「魔法があるのに文明レベルが遅れている」に関してですが、可能性としてはあり得えます。どれだけ便利なものがあっても、それを活用できる人々がいなければそれはガラクタになります。古代ローマのテクノロジーもイスラム帝国時代のアラビアン技術も古代中国の長い歴史も、当事者がいなくなり、価値観が変化すれば一瞬でゴミになります。魔法は特に体系化し辛い分野になるとは思うので、文化継承という面では非常に扱い辛い物になるのではないでしょうか。そう考えるとこの一見パラドックスに見えるこの論点も答えが見えてきます。

 魔法はあくまで技術とセットです。杖や箒、タクトなど魔法を行使するために必要な小道具は多くの作品に登場します。異世界系ファンタジーであれば刀剣に代表される武器にも魔力発生補助が備わっていますし、ローファンタジーであれば『ストライクウィッチーズ』に代表されるストライカーユニット、『幼女戦記』の演算宝珠の様に魔法を科学時術によって強化、補助する作品が多々あります。ハイファンタジーとローファンタジーでは世界の構造が根本から違いますが、どのような世界観であれ「魔法を道具に落とし込めること」は非常に重要な意味を持っています。これはいったいどういう事でしょうか?

 おそらくですが、「道具に落とし込めること」とは「人間が手懐けていること」のメタファーであることを示しています。魔法に関わらずスペースファンタジー物での恒星間超速移動装置、SF特有のビームライフルやビームソードなども実社会の現代人であれば手に余るような物でも、フィクションの世界であれば取り扱える。より詳しく言うなら、「頭の中で取り扱えるオーバーテクノロジーはフィクションで演出可能である」という事です。魔法もこれに当てはめることが出来ます。魔法を取り扱えるテクノロジーの進歩もフィクションの醍醐味であると言えます。

 少し話題が逸れましたが、ナーロッパの魔法が何故文明レベルを進化させないのかの仮結論をまとめます。それは“中世”という文化レベルでは魔法を取り廻せる技術はそれほど発展していないとおそらく考えています。蒸気機関や電気、原子力など人類の長い歴史の中で急速な発展期イノベーション・エイジが訪れます。魔法“科学”にも同じようなものが訪れるのだと思いますが、それは“中世”ではないという事なのでしょう。つまりナーロッパ人に魔術は少しだけ過ぎた技術であるという結論でこの章を締めたいと思います。

 まず、ハーレムより先に奴隷について考えてみましょう。奴隷は人類の歴史において非常に重要な役割を持っていました。古代のギリシアやローマの奴隷は有名ですし、大航海時代からの奴隷貿易もあります。アメリカ南北戦争での奴隷解放宣言の一節は非常に知れ渡っているでしょう。

 奴隷について考える上で最も大切なことは「人として扱わない事」です。アリストテレスの「生命ある道具」という表現が分かりやすいですが、あくまで奴隷は道具です。用途は様々ですが、基本的には労働力として利用されていました。人の代わりに家を建てたり道を作ったり、死んでも替えが効くし、要らなくなれば売ればいい。それぐらいの存在です。

 ここからは奴隷の表現の話になってきますが、まず奴隷には主体がありません。何故なら道具に言葉はいらないからです。動くか動かないかそれだけです。ですので、もし奴隷少女を物語に登場させるなら、人間にするところからはじめないと少々おかしくなります。もし奴隷が主体性を持つなら、奴隷制自体をきちんと考えないといけません。古代からの悩みである「奴隷が反乱したらどうしよう」を解決できるように社会システムを作らなければ後に矛盾が生まれてしまいます(スパルタみたいに最強になればええんやという思考でも面白いかもしれませんが)。

 続いてハーレムについてですが、「主体性の強すぎる女を複数人囲う」という事実を中世っぽい世界で矛盾なく表現できるのか、これにつきます。別に一夫多妻制自体は違和感がありません。問題なのは女性の立場が妙に大きいことです。女性である意味があるのかないのかは物語を堪能する上で割と必要な要素になっていきます。例えば、女だけど家継のために男に育てられた騎士とか、修道院の女神官とかなら分かります。あとは娼婦でしょうか。この職業も歴史が長く、それなりの地位があるために使い勝手は良いでしょう(その代わり読者層が求めてそうな処女である可能性は限りなく低いでしょうが)。

 ここでの問題は「実社会では存在しえない職業をどう取り扱うか」です。まずは魔法関連。これに関しては「若い女には特有の呪詛があって、術師として扱える女にはまだ価値がある」という世界観を用いれば容易に取り廻せるでしょう。それこそ“魔女”を使ってもいいかもしれません。とにかく、「術師としての女性」は娼婦と並んでの女性職業として存在できるでしょう。

 ですが、冒険者(この表現もどうかと思いますが)はどうでしょう。10代そこらの女性が大剣を振り回す絵は少し違和感があります。遠距離系武器も空間把握能力が男性より少し劣る女性が業界トップになるのは少し厳しいでしょう。しかし、近場の情報処理能力は高いので暗殺術や近距離戦で軽めの装備を得意とするキャラクターにすれば戦闘面でも活躍できるでしょう。ただし、ゲーム系特有の“パーティ”論で言えば、サポートキャラクターは必須です。盾役と陽動などで使える遠距離キャラでしょうか。とにかく、小隊行動をするならば、このようなデメリットを補いつつメリットを活かせる編成を主人公に行わせるのも手では無いでしょうか。そうすれば、男女比が極端に偏ることもなくなると思います。

 長くなりましたが、ハーレムと奴隷については世界観に依存します。ですので、もしこのようなジャンルを書こうと思うのであれば、見せなくても矛盾しない設定づくりを心掛けないとなりませんね。

最新記事